タイズからアデンへ移動
08/10/25(土) 曇り
[Taiz→Aden:Yemen]
※レート:1米ドル=200イエメンレアル、1ユーロ=270イエメンレアル
・犬の屍を越えてゆけ
・アデンのまち
5時すぎに起床。昨晩も涼しかった。しばらく書きもの。
雨が降っていたら明日にしようかと思っていたが、天気が良さそうなので今日アデンに移動することにする。
7時半頃、宿をチェックアウトしてバス会社と乗り合いタクシー乗り場がある地帯へ移動。下り坂を歩いて20分ほどでも行けたが、少しでも早く車を捕まえられればと、あえてミニバスに乗る。が、しかし、これが思いしもしなかったところで違う道に入ったため慌てて降りる。これはもう歩いた方がいいなと思い、歩く。
通り過ぎるミニバスの中からこちらを伺い見る視線多数。子どももアバヤ(ブルカ)を着た女性もちらちらとこちらを見ている。
まずはバス会社に行ってみたが、まだオフィスが開いていない。なので、バスはやめ乗り合いタクシーにする。
プジョーのライトバン。ちょうどもうすぐ満席という車があったのでそれに乗る。乗り込んだのが遅かったので、真ん中の座席に座ることになる。なかなか窮屈。助手席に2人、後部の前列に4人、後列に3人というのは通常通り。この間、下見に来たときは運賃600リアルと言い、別の乗客に聞いたときも600リアルと言っていたのに、料金係のおじさんは荷物があるからなどと理由を付け800リアル請求してくる。それを脇で見ていた乗客も苦笑いしているが、一緒に抗議をしたりはしてくれなかった。100円(200リアル)のために抗議し続けるのもアホらしいので、何度か抗議して相手が折れそうにないのを見てしぶしぶ800リアル払う。
すぐに満席になる。運転手はキーを回してエンジンをかけるのではなく、赤いコードと別のコードをつなげてエンジンをかける。運転席のハンドルの下はカバーがされておらず、内部の機械というか配線みたいなものがむき出しになっている。
運転手はクラクションをバンバン鳴らしながら飛ばす。例のごとくメーターのたぐいは動いていないからわからないが、おそらく時速80kmは出ている。もちろんそれだけのスピードが出せるのは路面がいいから。
検問が何カ所かあったが特にチェックされずに通過。
しばらく走ると車道の真ん中あたりに犬の死体が1体。ひかれてまだ時間がたっていない様子。その後、また犬の死体が車道に横たわっているのを見る。運転手はスピードを落とすことなく、その死体をまたぐ。するとまた10分もしないうちに2体の死体が道路脇に放置されているのを見る。それからまた10分もしないうちに反対車線に犬の死体を見る。などと走り出して1時間程度で10体の犬の死体を見る。イエメンの人は運転が荒いから、犬がいてもスピードを落とさないんだろうな、などと思う。それにしても殺しすぎだろ!
ときおりうとうとしつつ、外を眺め続ける。日本にはないが、イエメンではよく見る背の高い穀物が畑に植わっていて、ちょうど収穫している人たちも見る。また、その茎(というか藁?)はまとめられて、円錐形に畑の上で乾かしていたりする。それからイエメンではこれまでいっさい見なかった藁葺き屋根をこの沿道で初めて見る。上記の穀物の藁を使った円錐形の屋根で建物は煉瓦作りの円柱型。ただ通常の家と比べてとても小さかったから倉庫か何かかもしれない。
景色は変化が大きく、そこそこ緑が多い景観が続いた後、砂漠化しているところを通ったり、その砂漠化しているところからちょっと走るとまた麦などが植わっている畑が広がっていたり、さらに行くとイエメン特有のお菓子屋ばかり20軒くらいずらずらと並んでいたりといった具合。このお菓子屋ストリートが不思議で、その周辺はまちがあるわけではなく、小さな集落があるだけなのに、お菓子屋ばかりが並んでいた。なぜ?
ガイドブックによれば3時間はかかるとあったが、2時間足らずでアデンに入る。アデンの入り口の検問ではさすがにパスポートとパーミットのチェックがあった。
沿道に10階建て程度の建物が建ち並び、ホテルと書いてある看板も多数見る。なかなか大きなまちだ。
車はアデンの市街地から離れたシェイクオスマンというところに止まる。ここが終点。止まった一帯は各地への乗り合いタクシーが乗り付けるいわばターミナルになっている。
タクシーから降り、リュックを受け取り、宿探し。幸いなことに周りには数軒のホテルがあった。どれも5階建て以上で中には最近建てられたような新しいホテルもある。
まずはちょっと高そうだが、近くにあった宿に行く。英語で聞くがあまり通じず。値段を聞くと1泊3000リアル(約1500円)と言う。1500リアルにならないかと電卓叩いて訪ねるも苦笑いするだけ。アラビア語なのではっきりとはわからないが、どうもこのあたりの宿は3000リアルが普通で安くても2500リアルだと言うようなことを彼は言う。その宿は辞する。
それから次に近いホテルに行ってみる。ここもフロントは白いタイル張りできれい。聞くとここは2000リアル(約1000円)だと言う。1500リアルにはしてくれず。まぁ、1泊だけの予定だからいいかとここに宿を取ることにする。パスポートを取られ、宿泊代を徴収されてから部屋に案内される。
部屋はちょうど掃除中だったのだが、前の人が使ったシーツなどは取り替えずに、ちょっときれいに畳み直したりしただけでオッケーと言う。いや、オッケーじゃないんだけど・・・。たばこ臭いし。それでもそんなことはあまり気にしない性分のため、また掃除のおじさん(というかおじいさん)は良い人そうだったので、まぁいいかとオッケーを出す。
さて、荷物を部屋においてさっそくムカッラ行きのバス探し。乗り合いタクシーが集まっているところにいた二人のおじさんに以前チケットを買ったことがあるバス会社のチケットを見せ、この会社のオフィスはどこかと簡単なアラビア語で訪ねる。すると二人はいっせいに互いに違う方向を指さす。おいおい!
一方のおじさんが、いやこっちだろうというようなことを言って、それで決着がついたようだったので、そっちに行ってみる。が、予想通り10分歩いてもそれらしきものは見えない。道ばたの店の人に聞いても知らないよう。
しょうがないのでまた乗り合いタクシー乗り場に戻る。ここでムカッラ行きの乗り合いタクシーをチェック。あちこちに行く乗り場の一角がムカッラ行きで、その車だけランドクルーザー。車の近くにいたおじさんに聞くとムカッラまで2000リアル(約1000円)だと言う。
それからまたバス探し。乗り場前の通りで交通整理をしていた警官らしき人にバス会社の場所を尋ねる。するとその人は親切にあっちの方向だと教えてくれ、さらに最寄りまで行くバスまで案内してくれ、バスの運転手に何やらぼくを頼むというようなことを言っている。親切だなぁ。
運賃20リアル(約10円)で10分ほど乗った頃、沿道にバス会社のオフィスが並んでいる地帯に着く。運転手は車を止め、ここだと合図してくれる。
バス会社のオフィスは4つほどあった。まずは以前1回乗った会社のオフィスに行く。ここは英語が通じる。聞くとムカッラ行きのバスはないと言う。これは外国人は乗せないということなのか、それとも本当にバスがないのか、などと疑いつつ、どこでチケットが帰るか聞くと、道路の反対側にあるバス会社を指さす。
なのでその指さされたバス会社に行ってみるが、ここもバスはないと言う。そして隣に行けと言われ、そっちに行くとここではなかったのか、ここでもないと言われ、さらに数軒隣のバス会社に行くよう言われる。そしてそのバス会社に行ってみると、バスはあるようなのだが今日も明日もないというようなことを言う。アラビア語なので詳細がまったくわからない。とにかく今日も明日もないというのはわかった。これで乗り合いタクシーで行くことを決める。
というわけで乗り物探しはこれで終了。アデンのまちを見に行く。
ミニバスに乗ってまずはタワイという地区へ。埋め立てたのか、潮が引いて干潟になっている一帯を一本の舗装道路が走っている。ミニバスはその道を走る。干潟の中を歩いている人が2~3人。一人は洗濯をしている模様。
シェイクオスマンから20分ほどでタワイ地区に到着。運賃40リアル(約20円)。
沿道にはやや老朽化した6階建て程度のアパート兼商店のコンクリート製の建物がズラズラと並んでいる。イエメン独特の建物というわけでもないので、新味がない。
ガイドブックによればここには大きな魚市場があるという。なので、バスを降りて港の方に行く。歩いていたら駄菓子屋の前に4人くらいで戯れている中学生男子がいた。その中の一人はぼくを見つけると「ジャッキーチェン」などと言ってカンフーのマネを始めたりする。ぼくが誰に対してということもなく、市場はどこと訪ねると、別の男子があっちの方と指さし、アラビア語でいろいろ言う。その間も例の少年はカンフーのマネをしていたのだが、それを見たその少年(道を教えてくれた少年)は、やめろというふうに彼の肩をつかんでやめさせようとする。
少年に教えてもらった方に行くと確かに海には近づいているのだが、立派な壁が建てられていて簡単には入れない。壁沿いに歩き港湾の入り口らしいところまで行く。すると、入り口にいた警備員の男が英語で「What do you want?」と聞いてくる。なので英語で魚市場に行きたいんだけどと言うと、あっちと指さし、アラビア語でなんだかんだと言う。指さした方は陸の方。あっちにあるわけないよなと思いつつ、しつこく探す気にもならなかったので、だまされたと思って指さされた方向に行く。
バスに乗って通った大きな通りを横断し、山手の方に行く。2本ほど入ったところはちょっとした市場的雰囲気の商店街になっていた。たしかに魚を売っている人は数人いる。が、魚の数は少ない。
魚市場はあきらめ、昼飯を食べる場所を探す。そのあたりにはいくつも食堂があったが、地元民の男たちでいっぱい。大通り沿いに行ってみると、けっこう客が入っている店を1軒発見。店の人が声をかけてきたので、そこに入る。料理名がわからないし、英語は通じないので、適当に周りの人が食べているものを指さし、注文する。料理が出てくるまでに隣の商店に行って水750mlを買う。
出てきたのはじゃがいもをメインにした炒め物と小さなスープ、パンなど。味はまずまずよろし。料金は220リアル(約110円)。
腹が膨れたところでアデンで一番古く大きな地区のクレーター地区に向かう。ガイドブックにあるように地元の人はこの地区のことをアデンと呼んでいた。
ミニバスに乗ってアデンに向かう。山を登って下った反対側がアデン。幹線道路からアパートのような5階建て程度の建物が建て込んでいる地域にバスは入っていく。午後になったからか昼休みで閉まっている店が多い。
ちょうどネット屋があったので、調べものもあったので、しばしネットを拝見。そこそこ早い。室内は冷房も効いている。ここも客の入りはよく、30席ほどある座席は7割程度は埋まっている。基本は男の利用者。
1時間ほどしてから街に出る。碁盤状になっている中心街を歩く。コンパクトに店などが立ち並んでいるからだろうか、タイズよりもここの方が商業活動が活発そう。
やや海沿いの通りにはアルチュール・ランボーが暮らしていたという建物があり、今はホテルとして使われている。ただその1階部分は改装中なのか、それともただぼろくなったのが放置されたのか、廃墟のようになっている。
一応、アラビア海を拝みに行く。その海辺には驚くことに遊園地があった。平日の午後ということでか、客はほとんどいない。まったくいないと言ってもいいくらい。そのすぐ近くは入り江になっていて、漁をするための舟が何隻も係留されている。
そこからまた歩いてランボーハウスに戻る。ランボーハウスの向かいにあるサッカー場では、これから試合が始まるらしく、大の男たちがいそいそと入場口に向かっている。
16時を過ぎた頃、中心市街地の店たちは昼休みを終え、商売を再開する。女性の洋服屋が並んだ通りや両替屋、お菓子問屋が並んだ通りなどをぶらぶら歩く。昼間とは違って人通りが多い。
他のまち同様、店にいる店員もしくは店主らしき人は男ばかり。買い物をしている女性は見るが、こうした店で働いている女性はほとんど見ない。あとここが蒸し暑いためか、アバヤ(ブルカ)を着ていても顔を出している女性が相対的に多いように感じる。まぁ、多いと言っても全体の5~10%程度という感覚。
駄菓子屋には、お金を持っている子どもたち(金持ちというわけではなく、小遣いをもらえる子どもという程度の意味。もしかしたら自分で稼いだカネかもしれないけど)が一人で、あるいは友達連れで来ていて、それぞれいくらかするのか確かめながら手持ちの小銭の範囲内で、なんとか気に入ったお菓子を買おうと真剣に選んでいたりする。
また、裏道のような幅1m程度の通りにも店は並んでいて、そこで物乞いをしている女性たちがいたりもする。しかし、サナアもタイズもそうだったが、国内有数の都市のわりには、その数は少ないように感じる。ここで見かけたのは全部で20人足らずか。ただ、女性が多く(全体の7割程度という印象)、しかも1~3歳くらいの小さな子どもを抱えている人も少なくなくないのはどのまちにも共通しているように思う。
中心部を歩いていてもヨーロッパ系や日本人など外国人旅行者に会うことはほとんどない。この日見たのは欧米人カップル1組のみ。
市場周りにはカート売りや果物屋、冠婚葬祭用らしい花の首飾りを売る人たちがいる。果物屋でバナナを買ってみる。バナナはイエメン産のバナナのようで、それらしきことが彼らが持っている箱に書かれている。イエメンでもバナナが栽培されているとは予想外だった。日本で一般に売られているバナナと比べれば小さいが味は似ている。1kgが100リアル(約50円)。安い。
18時を過ぎて日が暮れ始めた頃、バス(マイクロバス)に乗って宿があるシェイクオスマンに戻る。
来るときは干潮で水がなかった海はすっかり海らしくなっていて、干潟はほぼすべて水の下に消えていた。幅1mほどある中央分離帯では、漁で使ったらしい大きな網を男2人が向き合って畳んでいる。他にも歩道から釣り糸を垂れて魚が食いつくのを待っている少年が3人。
宿近くまで来たとき、沿道にインターナショナルなんとかと書いてある小型のショッピングモールのような建物を発見。バスから降りて行ってみる。敷地8畳程度の店がたくさん入った3階建てのモールで、入っている店は金を中心にした宝石・アクセサリー屋と香水や化粧品を売る店、ドレス系などの女性服を売る店ばかり。アバヤ(ブルカ)を着た女性たちが買い物に来ている。1階だけ見て出る。
その向かいにはわりと大きなスーパーマーケットがあったので、そこにも行ってみる。商品はふんだんにあって、客も多い。冷蔵庫も冷凍庫もちゃんと動いている。コーヒーが売っている棚を見に行ってみたが、やはりここも棚の7~8割程度がネスカフェ。イエメン産のモカコーヒーなどは下の方の棚に並べられているだけ。なお紅茶の棚はリプトンが目立つ。他に高級そうな紅茶も売っていて、これはイギリス製。
ここでは水だけ買って出る。
そのまま宿に帰ろうと思ったところ、たくさんの人通りがある通りが目に入る。晩飯のこともあるので、そちらに行ってみる。
その通りの辺りは食堂などの商店の他公設らしい野菜市場があり、通りは露店だらけ。露店と言ってもテントのようなものがあるわけではなく、シートの上に商品を並べているだけ。あとは商品が見えるようだいだいみな石油ランプのようなものを持っている。中には懐中電灯で商品を照らしている人も。
シャツやズボン、靴下、ニット帽、時計、電池、果物、野菜、魚、お菓子などなどいろんなものが道ばたで売られている。日本の感覚で言えば、縁日の屋台通りのような雰囲気。
この時間(日暮れ後の19時頃)に魚をこうして売っているのは珍しい。アジや鰯、鰹のような魚に混じって小型の鮫もいた。それを見て、もしやここでは鮫が食べられるかと思い、辺りにある食堂に行って、鮫を写した写真を見せ、これが食えないかと訪ねる。するとそこの店の人は首を横に振り、他の見せに行くような仕草をする。親切にもアラビア語で紙に、なにやら書いてくれて、これを見せて回れみたいなことを言う。
何が書かれているのかわからなかったが、その紙を持って1軒、2軒と食堂をまわってみるが、回った範囲では鮫を出す店はなかった。しょうがないので、それはあきらめ、イエメン定番のぐつぐつ煮込んだ鍋を食う。
腹が膨れ、一帯を一通りまわったのち、宿に戻る。昼間は暑かったものの、この時間にはだいぶしのぎやすい気温になっていた。部屋には扇風機があったので、それを付ければ十分涼しい。
水のシャワーを浴びた後は、読んだり書いたりして寝る。
Fin